【コミケでキャッシュレス決済】使えそうなサービスまとめとC99の振り返り

2021年12月に開催されるコミックマーケット99においては、感染症対策などの観点から、サークル側にキャッシュレス決済の導入を勧めることがコミケットアピールに記載されました。しかしながら、同人サークルがキャッシュレス決済を導入するのは意外とハードルが高いんですね。そこで今回は、コミケなど同人誌即売会において使えそうなキャッシュレス決済サービスをまとめてみました。そして、私も弱小サークルながらサークル主の一人でして、コミケに向けてキャッシュレス決済を申し込んでみましたので、その体験談についても書いていきます。

目次

Circle Pay

C99の当落速報メールにも広告が載っていたサービスです。QRコード決済で、初期投資費用はゼロでスタートできます。運営会社はサークルペイ株式会社とありますが、どうやらコミケwebカタログなどを運営しているCircle.msと関係があるようです。C99では決済手数料が0円になるというキャンペーンも実施しており、費用面に関してはかなり有利です。これまでこういった同人サークル向けのキャッシュレス決済サービスはなかったので、実に画期的なサービスです。これまで同人サークルはなかなか審査を通過しないということがありましたが、Circle Payならば安心ですね。

しかし問題点もあります。まず対応しているQR決済アプリです。今後順次拡大予定とありますが、2021年12月5日現在、対応しているのはJ-Coin Payのみです。今後どのサービスに対応するのかということも書かれておらず、C99までにこれ以外のサービスに対応するか?と言われたら微妙です。J-Coin Payはみずほ銀行が中心になって運営している決済サービスです。恐らく聞いたことがない人もいるかと思います。実際、使っている人はほとんどいません。

MMD研究所
2021年7月スマートフォン決済(QRコード)利用動向調査 MMD研究所は、18歳~69歳の男女45,000人を対象に2021年7月1日~7月5日の期間で「2021年7月スマートフォン決済(QRコード)利用動向調査」を実施いたしました。

MMD研究所の調査によると、「最もよく利用するQR決済サービス」で、1位はもちろんPayPay。次点でd払い、楽天ペイと続いていきますが、上位8サービスの中にJ-Coin Payは入っていません。つまり、Circle Payを導入したところで、使う人がいるのか?というのが最も大きな問題です。大多数のサークルがCircle Payを導入すれば変わるかもしれませんが、実際のところそういうわけにも行かず、なかなか利用者としては厳しいのかなと思います。QRコード決済であれば、PayPay、LINEPay、メルペイ、楽天ペイあたりが使えることはマストではないでしょうか。そしてもう1つの問題は、このサービスの運営にはみずほ銀行が大きく関与しているという点です。前述のとおり、J-Coin Payはみずほ銀行が中心となって運営しているサービスで、このcircle Payの運営にも大いに関与しているようです。みずほ銀行といえば、ここ最近大規模な障害が頻繁に発生しており、会社の信用度はゼロというかマイナスです。流石に可能性は低いですが、コミケ当日に障害を起こされたら大変です。また、circle Payの公式ホームページもかなり不十分です。例えば「よくある質問」のページはほぼ空白になっており、まだ制作途中のような状態です。まだスタートしたばかりのサービスなので仕方がないことなのかもしれませんが、お金に関することなので、ちょっと信用度に関してはかなり低い評価にならざるを得ません。

Circle Payは初期費用ゼロなど導入のハードルが低い反面、マイナーな決済サービスにしか対応していないため、果たして本当に利用者がいるのか?という点と、スタートしたばかりのサービスということもあり、信用度が低いという点が問題点として挙げられます。

PayPay

QRコード決済において圧倒的な強さを誇る決済サービスです。もちろん最大手で、ユーザー数も圧倒的です。私は使っていませんが、本当に多くの方が使っています。コンビニなどでもPayPayで支払っている人が多いです。

しかし、加盟店審査は相当厳しいようです。具体的には事業者として開業届を出していないと、審査を通過するのは厳しいようです。逆に通常の事業者は導入のハードルが低いようで、他のキャッシュレス決済に対応していなくても、PayPayには対応しているケースが多くあります。しかし、同人サークルが導入するのはかなり難しいのではないかと思います。

PayPay
頑張っているあの人にPayPay残高を送ろう~ 頑張る人を応援したい方へ ~ - PayPayからのお知らせ いま頑張っているあの人に、PayPay残高を送って応援することができます。ただし、法令により以下の制限がありますので、ご留意の上、ご利用ください。

また、PayPayの個人間送金を利用しているサークルもあるようです。このやり方であれば審査を通ることもなく、最も簡単にキャッシュレス決済ができるように見えますが、物品の購入で個人間送金を利用するのは規約違反になりますので、これは注意が必要です。PayPayに限らず、QR決済サービスの多くは個人間送金における物品のやり取りを明確に禁止していたり、売り手・買い手間にトラブルがあった場合でも決済サービス側は責任を負わない旨が規約に書かれています。なのでコミケなどの即売会で個人間送金を利用するのはオススメできません。現時点でサークルがPayPayを導入するのは非常にハードルが高く、残念ながらほぼ無理だと思います。PayPayはとにかくユーザーが多いだけに残念ですが、多分諦めた方が良いです。

Stores決済

今めちゃくちゃテレビでCMをしている決済サービスです。対応している決済方法はクレジットカード(Visa、Mastercard、JCBなど)、交通系ICカードと、QRコード決済(WeChatPay)です。WeChatPayは中国の決済サービスで、現時点で使う機会はなさそうですが、今後コロナ禍が終わったら中国人観光客が使うかもしれませんね。見て分かる通り、クレカと交通系ICに対応できるというのは非常にデカイです。恐らくビッグサイトまでの電車およびバスでは、ほとんどの人がICカードを使うでしょうし、クレカも社会人ならたいてい1枚は持っているでしょうから、大多数の人がキャッシュレスの恩恵に与ることができます。また、後述するSquareと比較して交通系ICカードの決済手数料が安いのは魅力的です。

初期費用としてカードリーダーが19800円しますが、2021年12月29日までは無料のキャンペーンを行っているようです。squareに比べると高いですが、暗証番号を入力するキーボードと小型のディスプレイが付いているのが特徴です。決済手数料はJCB系列を除くクレカとWeChatPayが3.24%、JCB、ダイナースクラブ、ディスカバーが3.74%、交通系が1.98%となっています。特に月額費用などの維持費はありません。注意点としてはAndroid端末ではなぜかICカード決済が利用できないようです。これは大きなマイナスポイントですね。

鴨屋
コミケ(イベント)用にキャッシュレス決済(STORES)を用意するまでの経過報告 | 鴨屋 さて、2021年冬、待ちに待ったコミケが再開される運びとなりました。現在開催されているイベントもそうですが、今回のコミケは特に感染者対策に重点を置いたものとなり...

Stores決済の審査は後述のSquareと比較してさまざまな書類(店舗の写真や販売している物品の説明など)を提出する必要があり、ちょっと面倒です。ただPayPayなどと違い、開業届などは必要なく、サークルでも導入可能のようですし、実際に導入されたサークルもあるようです。

Square

私が結果的に導入を決めたのがこちらです。対応しているサービスは前述のStores決済と似たようなもので、主なクレジットカード各社と交通系ICカードには対応しています。しかし微妙に違っており、SquareではQR決済には対応していませんが、逆にiDとQuicPayに対応しています。この2つは結構ユーザーも多いサービスなのでありがたいですね。初期費用としてはカードリーダーが7980円します。このカードリーダーはBluetoothでスマホまたはタブレットと接続して使用します。決済手数料はJCBと除くクレカと交通系ICカードが3.25%、JCBが3.95%、iDとQuicPayが3.75%です。月額費用などはかからないので、維持費の心配は必要ありません。実際squareを導入している、あるいは導入しようとしているサークルはかなり多いようで、Twitterでもかなり頻繁に見るようになりました。もしかしたらCircle Payよりも多く導入されるかもしれません。

Stores決済と比較してとにかく審査が緩いのが特徴で、基本的な個人情報などを入れるだけ、つまり事業内容を説明する資料などの提出は基本的に不要です(もしかしたら追加で提出を求められる可能性はあります)。また、Stores決済と同じく開業届などは必要ありません。私の場合は申し込みから2時間程度で一次審査(VisaとMastercard)を通過したというメールが来ました。通常、こういった加盟店審査というのはもっと難しいものですが・・・ちょっと拍子抜けするレベルでした。同人サークルでもかなりの確率で審査を通過することができるようです。

Stores決済とsquareは、CirclePayとは違い、とにかく利用者が多い決済サービス、交通系ICやクレジットが利用できるという点において、圧倒的に優れています。初期費用はかなりかかりますが、「利用してもらえるキャッシュレス決済」を目指すならば、この2つを選択するべきだと思います。

実際にSquareを導入してみたよ

導入を決めたきっかけ

C99に受かりまして、それで前々から興味があったキャッシュレス決済をこの機会に導入してみようかな?ということを考えて導入に踏み切りました。なぜsquareを選んだのかというと、やはり多くのサークルで導入実績があり、審査が簡単だということと、クレジットカードと交通系ICが使えるとのことで、squareにしました。ただ面白味はありませんね。かなりの数のサークルで導入されているようなので・・・。そこまでキャッシュレスを極めるつもりはないので、とりあえず安全牌なところを選びました。

申し込み

squareの申し込みは実に簡単でした。必要なのは名前や住所、口座などの個人情報と、店舗情報を入力します。店舗の情報ですが、固定店舗か移動店舗かとか、店舗の場所(自宅住所でOK)、などを入力するだけで、どういったものを販売しているかや、売り上げ金額などについては入力をする必要はありませんでした。

審査

squareの審査は5段階で行われます。まず第一に、VisaとMastercard、Amexの審査です。この3つは1~2日で審査されるようですが、金曜日の夜に申し込んだにも関わらず、わずか3時間ほどで審査を通過しました。その後、自動的にJCBの審査が行われます。交通系電子マネーの審査は、自動的ではなく、手動で審査に申し込まないと使えないので注意が必要です。また、QuicPayの審査は、JCBの審査が通った後に申し込みが可能になります。12/3に申し込みをし、Visa/Masterの審査が即日通過したあと、次に審査を通過したのは交通系ICでした。こちらは12/8に審査を通過しています。また、同日、iDの審査も通過しました。また、さらに同日の夕方にはJCB系の審査も通過しました。これによりQuicPayに申し込めるようになったのですぐに申し込みまして、3日後の12/11に審査を通過しました。最初の申し込みからすべての決済方法が使えるようになるまでわずか一週間。追加の書類の提出なども求められることもありませんでした。

決済端末

決済端末は申し込みと同時に買いました。7980円の「squareリーダー」です。4.6万くらい出すと、レシートが出たりディスプレイが付いた決済端末が買えるようですが、なかなかお高いですね・・・。購入した翌日には発送され、発送された次の日には届きました。

こちらが外箱です。小さいですががっちりしています。

蓋を開けるとこんな感じです。なんかスマホみたいですね・・・。

キャッシュレス

付属品各種です。説明書とシール、あとは磁気カード用アダプタとMicro-USBケーブル(充電用)です。磁気カードのアダプタはイヤホンジャックに差し込んで使うようですが、私のスマホはいずれもイヤホンジャックがなく、現在磁気カード自体ほとんど使われていないと思うので使うことはなさそうです。

本体です。大きさのわりにずっしりしており、それなりに重さを感じます。側面に電源ボタンとカードの差込口があり、上にはICカードのタッチができるようになっています。隣にあるアクリルスタンドは別で注文しましたが、無料です。ただ思ったより小さいなあという感じでした。

実際にC99でsquareを使ってみた感想は↓の記事をご覧ください。

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購入者はどう判断するか

ここで、サークルではなく一般参加者の立場に立ってみようと思います。Twitterで見てみると、CirclePayを導入しているサークルは結構多いようです。これは初期費用が無料ということや、導入へのハードルが低い(ように見える)からだと思います。現状、CirclePayで使えるQR決済はJ-Coin Payのみですので、会場でキャッシュレス決済をしたいならばJ-Coin Payは入れておいて損はないと思います。また、やはりsquareを導入するサークルもかなり多く、観測できる範囲ではCirclePayと同じくらいかそれ以上がsquareを導入するような感じです。squareではクレカと交通系ICが使えます。恐らく大半の参加者はこのどちらかは持っていると思いますので、買う側は何も準備は必要ありません。強いて言えば、交通系ICは目いっぱいチャージしておく、ということくらいでしょうか。

C99でのキャッシュレス利用状況

実際にC99ではキャッシュレス決済(square)を導入してみました。やはりコミケ=現金という文化が根付いており、現金での支払いの方が多かったです。しかし、およそ30%程度はキャッシュレス決済でした。普通の店舗の場合、金銭をやり取りするよりキャッシュレス決済の方がスピードが速いんですが、コミケの場合は決済端末も店舗のものに比べればずいぶん簡易的なもので、さらに基本的に買う側も小銭を用意するのが暗黙の了解ということもあり、コミケに関しては現金決済の方がスピードが速かったです。交通系ICやiD、QuicPay、Visaタッチ決済はまだ良いんですが、タッチ決済でないクレジットカードの場合、クレカを差し込んだうえでさらにサインが必要なので、かなり時間がかかりました。また、匿名でのやり取りが基本となるコミケにおいて、サインは当然本名なので・・・ということもありますね。コミケでキャッシュレス決済を利用する場合、ICかタッチ決済を使った方が買う側も売る側も得ではないかなと思いました。私のサークルはすべての頒布品が500円または1000円だったということもあり、特に1つだけを購入する場合においては現金が圧倒的に速いです。ただ複数購入する場合、決済用スマホに打ち込めば合計金額も一発で出ますし、お札を何枚も用意する必要もないので、複数の場合はキャッシュレスの方が速い可能性もあります。通信環境ですが、人が少ないということもあり、通信できずに決済エラーが出ることは全くありませんでした。ただし、これが20万人とかになってくるとどうなるか分かりません。

他のサークルも見て回りましたが、だいたいキャッシュレス決済の導入率は30%前後ではないかと思います。このうち半分くらいがCirclePayという感じです。やはりコミケット運営が推奨しているだけあり、CirclePayを導入しているサークルはかなり見られた印象です。しかし、結局C99ではJ-CoinPayというマイナーな決済サービスしか提携しておらず、CirclePayのみを導入していたサークルはどれくらい利用されていたのか気になるところです。正直なところ、CirclePayは他の決済サービス(PayPay、PayPay、PayPayなど)と連携しない限りは利用者が伸びないと思います。だってQR決済使ってる人、ほとんどPayPayなんだもん・・・。それ以外ではやはりSquareを導入しているサークルも結構見かけました。初期投資は多少かかりますが、とにかく利用者の多いクレカやICカード決済を導入できる最も手軽なツールなんですよね。現状、審査もかなり緩いですし。それ以外の決済サービスを導入していたのは本当にキャッシュレスを極める系サークルがほとんどで、多くはこの2つのどちらか、という感じでした。

まとめ・・・現状はSquare一択ではないか

事業者ではない、趣味でやっているサークルがキャッシュレス決済を導入するのはやはりハードルが高いです。特に中小サークルは、導入に見合ったリターンが得られるとは考えにくく、金銭面のことだけを考えた場合は導入しない方が良いと思われます。通常の店舗は別ですが、同人誌即売会の場合、最初からあらかじめ買うものを決めて行くケースが多いかと思います。キャッシュレス決済に対応しているから買って行こう、みたいなことにはならないかなと思います。そう考えると、端末の導入費用や決済手数料がかかるキャッシュレス決済というのは、基本的には不要だと思います。

その上で導入するのであれば、現状ではSquare一択になると思います。CirclePayは導入のハードルが低い一方、今はマイナーな決済サービスしか対応しておらず、実際に使ってもらえるか?という点において疑問が残ります。最も利用者が多いQRコード決済のPayPayは、導入のハードルが非常に高く、一見簡単そうに見える個人間送金を使うのは規約違反になるので注意が必要です。Squareは導入コストとして8000円程度かかりますが、審査が緩く、必要事項を書いて申請すればサークルでもかなりの確率で審査を通過することができ、なおかつクレジットカードと交通系ICという非常にユーザーが多い決済方法が使えます。類似のサービスとしてStores決済などがありますが、やはり審査が最も簡単かつ緩いと言われているのがSquareなので、現状ではSquare一択ではないかと思います。

サークルの中には、キャッシュレス決済を極めているサークルがあり、今回取り上げた決済サービス以外にもSteraやAirPayなど、さらにハードルが高いサービスを導入しているサークルも存在します。しかし、このあたりはそれこそキャッシュレス決済を極めるのでなければ、手間をかけて導入するメリットはほぼなく、わざわざ選択する必要はないかと思います。前述の通り、サークルがキャッシュレス決済を導入することは、それが売上増加に繋がるか?と言われたら微妙ですし、それ以上に導入コストや決済手数料がかかるのは間違いありません。このご時世、キャッシュレス導入を推進するという風潮もありますが、導入するメリットと費用を天秤にかけて、慎重に考えた方が良いかと思います。

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この記事を書いた人

趣味のサークル「進電舎」サークル主です。もともとは鉄道が好きでしたが、そこから貨物列車へ興味を持ち、今では貨物列車の同人誌を執筆しています。この他にもバス、飛行機、競馬、競艇、アマチュア無線、ガジェットなど、「広く浅く」趣味を楽しんでいます。おかげで1日が24時間ではとても足りません。

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