台湾島をぐるっと一周するように走る台湾鉄道(台鉄)。この記事ではどの列車に乗るときに予約が必要で、その予約方法などを解説しています。台鉄は特急であっても料金がとってもリーズナブル!台鉄は混みやすいので早めの予約がマスト!旅程が決まったら早めの予約がオススメです。
予約が必要な列車と不要な列車
台鉄の列車は大きく3つ。「予約が不要な列車」「予約は必須ではないがした方がいい列車」「予約必須の列車」があります。予約が必須な列車に予約せずに乗車すると、罰金を支払わなければならないこともあるようなので、乗車する際は注意が必要です。
予約が不要な列車
区間車・区間快
日本で言う所の普通列車と快速列車になります。乗車券のみで乗車でき座席指定や有料座席はありません。区間車は基本的に各駅に停車し区間快車は一部の駅にのみ停車します。区間快のうち後述する莒光号を置き換えた列車などは停車駅が比較的少なくなっています。短距離の列車が多いですが始発から終点まで3時間以上走る列車もあります。いくつかタイプはありますが韓国製の車両が多く、車内はロングシートまたはボックスシートになっています。
予約しなくても乗れるが予約した方がいい列車
原則として予約が必要ですが、無座(座席を確保しない)場合に限り悠遊卡や一卡通といったICカードで乗車することができる列車です。(どういうシステムなのかは不明ですが降車時に自動的に自強号の料金が精算されるようです。)ただしICカード以外で乗車する場合、乗車前に指定席券または無座票を購入する必要があります。なお70km未満をICカードで乗車する場合は区間車の料金と同額で乗車できます。なお満席などで事前に座席を指定せず乗車することを「(自願)無座」と言います。無座で乗車した場合空いている座席に座ることはできますが、台鉄の列車は料金が安いこともありどの列車も混んでいることが多いです。なので乗る列車が決まっているときは早めに予約することをお勧めします。逆にこういった無座というシステムがあるので、あらかじめ座席指定した場合でも途中駅から乗ると指定された座席に違う人が座っている・・・ということもあります。面倒ですが座席指定券を見せてどいてもらうしかありません。
自強号(PP自強号、DR自強号)
比較的古い車両で運転される自強号です。後述しますが新しい車両で運転される自強号は「新自強」や「EMU3000自強号」と呼ばれ予約必須となりますので、同じ自強号でも制度が異なるという点に注意が必要です。PP自強号は前後に機関車が連結されている車両で、機関車は南アフリカ、客車は韓国または台湾製となっています。12両編成で1~11号車は普通の車両ですが、12号車は荷物室があり、ここに無座の人が多く集まっていました。12号車には座席もありますが、1列&2列座席なのでここに当たるとラッキーです。なおPP自強号の12号車は列車により親子専用の「親子車」になっている場合があり、この場合12号車には無座で乗車できないので注意が必要です。一週間に1本(金曜日発)のみですが、新竹~台東間で夜行列車のPP自強号も運転されています。
DR自強号はディーゼルカーで運転される列車で、かつて電化されていない区間があった時代は多く走っていましたが、主要幹線の電化が完了した今では順次電車に置き換えられています。2024年6月のダイヤ改正以降は1日4本のみの運転となっています。日本製の車両で車内が一昔前の日本の車両っぽさがあります。基本的に9両編成で運転されています。
莒光号(きょこうごう)
日本では見られなくなった機関車と客車が連結された列車です。自強号より値段が2割~3割ほど安いですが、停車駅が多く速度は遅いです。途中で自強号に追い抜かれることもあります。置き換えが進んでおり、順次新自強号に格上げ、または区間快に格下げが行われており、現在では限られた本数のみ運行されています。車内の設備は自強号とほぼ同じリクライニングシートとなっており、速度は遅いですが快適な車両です。列車によっては荷物車が連結されています。2024年6月のダイヤ改正では夜行列車が廃止となりましたが、それ以外の運行本数は変わっていない模様です。
予約が必須の列車
新しい車両(TEMU1000、TEMU2000、EMU3000)で運転される自強号は新自強と呼ばれており、無座での乗車が禁止されています。ただし当日のみ、満席時の救済措置として1列車120枚限定で無座票が発売されていますが、自強号と異なりICカードであっても事前に有効な指定席券、無座票を購入せずに乗車することは禁止で、違反すると罰金を取られます。台北~瑞芳などの短距離でも違反ですので、これらの列車に乗車する際は乗車前に必ず有効な乗車券を購入し乗車しましょう。なお料金は自強号も新自強号も同じ値段です。余談ですが台鉄の列車名は日本とは異なり、運行区間ではなく運転される列車の形式により列車名が決まっています。台北から東海岸、花蓮方面に行く列車も、西海岸、台中、高雄方面に行く列車も「自強」「タロコ」「プユマ」など違う方面でも運行される車両が同じなら同じ列車名になりますので注意が必要です。
タロコ号(太魯閣号)【TEMU1000形】
2007年に運行を開始した日本製の振り子式車両です。特急「かもめ」「ソニック」で運用されているJR九州の885系をベースに製造されました。後述するTEMU2000やEMU3000より数が少ないので本数はそれほど多くありません。主に東部幹線(台北から花蓮、台東方面)で運行されており、速達列車に投入されています。振り子式で揺れが大きいため長らく立ち席乗車(無座)が認められていませんでしたが、現在では枚数限定で無座券が売られています。
プユマ号(普悠瑪号)【TEMU2000形】
タロコ号と同じく日本製の振り子式車両です。タロコ号は日立車両で製造されましたがプユマ号は日本車輛製です。タロコ号より本数が多く、東部幹線、西部幹線、南廻線のすべての系統で運行されています。タロコ号と同じく全車普通車ですが、4号車と5号車の一部に大型のテーブルを備えたグループ席が用意されています。座席もタロコ号と同じく無座は定員制でICカードによる無座乗車は不可となっています。後述するEMU3000と比べ両数が少なく、速達列車が多いので列車によってはかなり早い段階で満席になることもあります。特に西部幹線(台北~台中、高雄方面)の列車はPP自強号よりも大幅に停車駅が少なくなっているので、特に人気が高い列車となっています。
新自強号(EMU3000形)
2021年より運行を開始した最新型車両ですが、急速かつ大量に増備され2024年8月には台鉄の車両で最大勢力(12両×50編成=600両)となっています。こちらも日本製の車両となっており、TEMU1000と同じく日立車両で製造されています。タロコ号やプユマ号とは異なり特別な列車名が用意されておらず、列車のLED表示器には「新自強」と表記されます。また切符やインターネット予約サービスの表示では「自強(3000)」と表記されます。
6号車には日本のグリーン車に相当する「商務車(騰雲座艙)」が連結されています。2列+1列のゆったりした座席で専任のアテンダントも乗車しています。一部の列車では食事も提供され、事前の予約ならば食事の種類も選択できるようです。料金は普通車の1.5倍~2倍程度と割高ですが、もともと普通車の料金が日本よりかなり安いのでそこまで高くは感じません。例えば台北→花蓮の場合、自強号の通常運賃は440NTD(約2200円)ですが、商務車だと796NTD(約4000円)となります。
一部の編成では6号車にグリーン車が連結されていない編成もあります。「特仕車」と呼ばれ、本来は団体列車や観光列車に使用されるようですが、現時点では通常の自強号としても運用されています。この特仕車で運用される列車には「自由座(自由席)」が設定されています。1編成のおよそ半分にあたる4~9号車が自由席となっています。無座とは異なりICカードでの乗車はできません。また、自由席といっても日本の自由席とは異なり乗車できる列車が指定されており、指定された列車以外に乗車することはできません。料金は指定席の5%引きとなっています。
環島之星号(フォルモサエクスプレス)・藍皮解憂号
この2つは団体・ツアー専用列車で、他の列車とは異なり台鉄の予約サイトからは予約できません。旅行会社を経由しての予約が必要となります。現地の旅行会社はもちろん、日本のJTBなどからも旅行商品として出ており、予約可能です。ただし通常の自強号などと比較するとかなり割高な料金となっています。
環島之星号は台湾をぐるっと一周するクルーズ列車で、右回りと左回りの列車がそれぞれ運行されています。観光列車ですが毎日運転となっています。車両は機関車に莒光号と同じような客車が連結されていますが、全車が2列+1列のゆったりした座席配列になっており、車内にはラウンジや売店などもあります。2023年からはディズニーのキャラクターが車内外に描かれた車両で運行されています。右回りの列車も左回りの列車も始発から終点まで乗り通すと13時間と、かなり大変ですが、途中の停車駅で乗車、降車できるプランも用意されていますので旅行の計画に応じて選ぶことができます。
藍皮解憂号はかつて区間車(普通列車)として運行されていた客車を使用した、日本で言うところの「レトロ列車」という感じです。この主に区間車として使われていた青い客車は「藍皮」と呼ばれていました。「解憂」は憂さ晴らしという意味です。この古い客車は日本製の客車もあります。運行区間は台湾の南部を走る南廻線で、枋寮駅から台東駅の間を1日1往復運行されています。乗車料金は予約サイトや日付によって異なりますが、片道3000~4000円、往復6000~7000円程度です。
ホームページからの予約方法
台鉄の公式HPのメニューから一般乗車券の予約へ進みます。するとこういった画面が出てきます。「一般車両」は普通車指定席、ビジネス車両はEMU3000のみに連結されているグリーン車相当の車両、自由席はEMU3000の一部で実施されている自由席、一番右はサイクルトレインの予約になります。
普通の指定席を予約したい場合、一般車両を選択しパスポート番号、出発駅(乗車駅)、到着駅(降車駅)、日付、枚数、列車番号を入力します。列車番号を指定せず時間帯を選択し検索することも可能です。座席は基本的に窓側または通路側の選択しかできません。日本のようにシートマップから選べる機能は現時点で実装されていません。サロンシートはプユマ号などにあるグループ席の予約になります。なお、台鉄の列車は乗車日の28日前(4週間前の同じ曜日)から予約できますが、土日のみ4週間前の金曜日(土曜日→29日前・日曜日→30日前)より予約可能となります。
台鉄公式HPにも時刻表がありますが、こちらの非公式版日本語時刻表が見やすくて使いやすいです。ここで列車の時刻を調べ、列車番号を割り出しておくと予約までスムーズに進められます。なお、列車番号が間違っていたりすると「満席です」と表示されることがあります。
空席がある場合このような画面になります。ここで列車を選択し、次へを押します。
予約が完了するとこの画面になります。昼時かつ特定の駅を発車する列車だと駅弁の予約がここから可能です。この時出てくる予約番号は切符の受け取り時に必要になるので、必ずメモしておきましょう。
その次の画面に移行するとこうなります。台湾以外にいる場合、駅やコンビニの支払いはできませんので決済はクレジットカードのみとなります。ここで画面の案内に従いクレジットカードで決済すれば予約完了です。
切符の受け取り方法・乗り方
現在、台鉄の自動券売機は上の写真のようなタッチパネル式のものが主流です。この券売機は実に高機能で、区間車の切符はもちろん、インターネット予約の受け取り、さらに新規の予約・発券も可能です。さらに日本語を含め複数の言語にも対応しており、音声案内も対応しています。
切符の受け取りは上の券売機、または窓口で可能です。単純に受け取りたいだけなら券売機の方が簡単です。手順としてはまず最初の画面で「日本語」をタッチして言語を変更します。その後「きっぷの受け取り」を押すとパスポート番号と予約番号を入れるフォームが出てきますので、入力します。正しい番号だと予約情報が出てきますので、あとは画面の指示に従って発券するのみです。日本語にも完全に対応してますので、全く躓くことなく発券できました。
こちらが台鉄の切符です。左が自強号の指定席乗車券、右が区間車の乗車券になります。磁気式の切符で日本の切符とほぼ同じです。
自動改札機は日本のオムロン製で、日本だと近鉄で使われているものとほぼ同型と思われます。改札の通り方は日本と同じで切符を投入口に入れると通れます。日本との一番大きな違いとしては、下車駅でも切符が戻ってくるという点です。日本だと使用済みの切符は改札機に回収されますが、台鉄はそのまま出てきます。ICカードは切符の投入口の上に読み取り機があります。QRコードの読み取り端末もICカード読み取り部付近にあります。
フリーきっぷ・フリーパス
台鉄には3日間~10日間自由に乗降できるフリーきっぷもあります。台鉄全線乗り放題のフリー切符は「TR-Pass」という名前で、いくつか種類がありますが、大きく分けると一般旅行者向けと学生向けのものがあります。一般向けは3日間NT1800(約9000円)、5日間NT2500(約12000円)で、観光列車を除くすべての列車(自強号を含む)に乗車できます。全席指定の自強号に乗車することもできますが、事前に窓口で座席の指定を受ける必要があります(無料)。学生向けは5日間NT599(約3000円)、7日間NT799(約4000円)、10日間NT1098(約5000円)と、破格の料金設定となっています。ただし学生向けのパスは莒光号以下、つまり自強号以上には乗車できません。学生向けは台湾版青春18きっぷと言った感じです。
これ以外に台湾高鉄にも乗車できる「ジョイントパス」というものもあります。2種類ありますがいずれも5日間有効で、自強号に乗れない(莒光号以下乗車可)きっぷはNT2800(約14000円)、観光列車以外、自強号を含む列車に乗車できるのがNT3600(約18000円)となります。なお高速鉄道に乗車できるのは5日間のうち任意の2日間に限られます。
このフリーパスの一番大きい注意点としては、現地で切符を引き換えるまで座席予約ができないことです。インターネットで予約した場合、予約から2日以内に窓口で支払い・受け取りを済ますか、クレジットカードで決済する必要がありますが、仮にフリーパス利用であっても予約したら決済しないと自動的に取り消しされてしまいます。なので指定席の予約は現地到着後フリーパス受取時か、ネット予約してから2日以内に窓口でフリーパスを提示して受け取る必要があります。台湾の鉄道は列車によってはかなり早い段階で予約が埋まることもあるので、この点は注意が必要です。
台鉄の豆知識
飲食はできる?
台鉄の列車は自強号でも区間車でも飲食が認められています。日本だと当たり前と思われるかもしれませんが、台湾は熱帯の気候で虫などが多いことから、台北MRTや桃園MRTといった地下鉄での飲食は禁止されており、見つかると罰金を取られます。ただ台鉄では通勤電車でも特に飲食が禁止されているということはありません。コロナウイルスが流行した2020年~2021年頃は飲食が禁止されていたこともありましたが現在では解禁されています。なお台湾高鉄でも飲食は問題ありません。
ゴミ箱事情
台鉄の車両は自強号の車両であってもゴミ箱は設置されていません(多分・・・見た感じではなかった)。ただし、自強号や莒光号ではゴミ箱が付いた台車を持った清掃員が定期的に巡回しているので、その人が来た時にゴミを渡します。駅にはゴミ箱がいたるところに設置されています。ほとんどゴミ箱がなくなった日本とは対照的です。ゴミ箱は一般ゴミとリサイクル可能ゴミの2つに分かれているのが一般的です。
車内販売と駅弁
台湾でも日本と同様に駅弁の文化があります。この駅弁文化は日本統治時代の影響とも言われています。台湾の駅弁といえば「排骨弁当」がとても有名です。日本の駅弁フェアで販売されていることもあるくらい有名です。年間の販売個数は1000万個とも言われます。日本の駅弁とは違い、温かい状態で食べることを前提に作られています。駅弁の包み紙には「2時間以内に食べてください」と書かれています。購入したら早めに食べた方が良さそうです。私も排骨弁当を食べてみましたが、慣れた日本の味とは違うのでやっぱり日本の味の方がいいな・・・と思いました。
駅弁は駅の売店で販売されています。駅弁の販売店がある駅は羅東、台北、板橋、桃園、新竹、台中、高鉄台中、彰化、嘉儀、新左栄、高雄、屏東、花蓮、台東、鳳山にあります。この他、自強号(新自強号などを含む)の一部では車内販売が行われており、車内販売で購入することもできます。また、車内販売がある列車では、切符の予約に弁当を予約することも可能です。事前予約すると車内販売員が駅弁を座席まで届けてくれます。
鉄道グッズ
台鉄の駅のうち6駅に「台鉄夢工場」という鉄道グッズの専門店があります。また公式HPには鉄道グッズの通販もあります。それくらい日本と同じように鉄道がメジャーな趣味の1つなんでしょうね。鉄道グッズには模型などの他、キーホルダーやバッグなど、実に多種多様です。子供向けのものが多いのでお土産にもちょうどいいかもしれませんね。
撮り鉄
海外だと日本とは異なり鉄道の撮影が自由にできない国がたくさんありますが、台湾は恐らく日本と同じくらいに自由に鉄道が撮影できる数少ない国の1つです。日本ほどではありませんが台湾にも「撮り鉄」がいて、旅行中に何度か目にしました。
鉄道関係の観光名所
台湾の鉄道はおよそ150年の歴史があり、鉄道の遺跡もあります。一番有名なのが上の写真の彰化駅に隣接している扇形車庫と転車台。日本で言うと梅小路(京都鉄道博物館)にあるようなものです。規模としては梅小路よりは小さいですが、この転車台と車庫は現役で使用されており、運が良ければ入換をしているのを見られるかもしれません。現役の建物ながら毎日公開されており、平日は午後のみ、土日は午前中から見学することができます。
台湾に現時点で「鉄道博物館」というものはありませんが、2027年に台北に鉄道博物館が完成する予定になっています。台湾の車両のほか、日本の車両も展示される予定となっています。これとは別に2020年にオープンした国立台湾博物館鉄道部という施設もあります。日本占領時代に建設された台湾総督府鉄道部の建物を活用したもので、保存車両はありませんが台湾の鉄道に関する展示物が数多く収蔵されています。
高鉄台南の駅前にはかつて日本を走っていた0系新幹線が保存されています。この車両は山陽新幹線の「ひかり」などで運用された後、台湾高鉄の建設に使用されるために台湾へ輸出されました。車両限界測定車としてトンネルや橋などが車両に当たらないかなどを調べる車両として改造されました。役目を終えた後は長らく車庫に置かれたままでしたが、2021年から高鉄台南駅前に展示されています。日本国外で0系が展示されているのはこことイギリス鉄道博物館のみです。
これ以外だと台湾南部の潮州市に潮州鉄道園区という鉄道をテーマにした施設があります。潮州鉄道工場に隣接しており、保存車両も何両かあるようです。